中国伝統医学と女性の健康

女性の体調不良と中医学

女性の体調は不安定であり、いつも何かしら体調不良を抱える女性は多い。病院に行くほどでもなく、病院に行っても異常なしと診断される場合、日本女性は、なんとなく冷える、気分が落ち込む等の不調に自分なりに対処しなければならない。

しかし、自覚症状に基づく女性の体調不良に積極的に対処してくれるところがある。中国伝統医学の「中医学(中医)」の世界である。中国では中医はごく一般的に利用されており、特に中国女性の生活に深く根付いている。日本女性が体調不良に自分なりに対処している一方で、中国女性は中医学の専門病院を気軽に訪問する。

よく知られているのは大都市にある中医薬大学の付属病院だ。患者は症状、薬の副作用等を鑑みて、西洋医学あるいは中医学を選択することもできる。西洋医学を修めた中医師も多く、西洋医学の血液検査結果をもとに中医師の診断を受けるということも可能である。

患者をトータルにみた中医師の診断

患者から見た場合、中医の診断プロセスは以下の通りである。個人の自覚症状が変化し体質に最適な処方に到達するまで、2.から4.のプロセスが1週間から1ヶ月のあいだ繰り返される。最適な処方が確定した後、3ヶ月程度継続して薬を摂取する。

  1. 問診:遺伝、生活習慣、食生活、睡眠時間、結婚の有無など詳細を把握する
  2. 舌診、脈診:舌や脈の形状から体内の状況を把握する
  3. 診断・処方:個人の体質に合わせて中医師が薬の原料を処方し量を調整する。原料は植物由来、動物由来等様々である
  4. 薬の摂取:摂取方法を選択する。原料を自宅で煎じる他、「代煎」といって院内の機械で煎じて液体のまま梱包することもできる。
薬剤だけなく生活態度が重要

また、対処法は薬に留まらない。推拿や鍼灸等、診断結果に応じてアレンジできるのが特徴である。カスタマイズされた医療、即ち「個の医療」の実現モ デルがそこにある。その他、体質や診断結果に応じて中医師から「食のアドバイス」があり、食べてよい食材、避けるべき食材を指示されることもある。中医師の最大の特徴は、全身の診断から治療、食生活指導まで一人の中医師が一気通貫で行うところである。気分が落ち込む等の精神的な症状も含めて対処してもらえ るため、患者にはワンストップのメリットがある。

医食同源の原点は中医学にある。幼少時から中医学に馴染んでいるためか、中国女性は自分の 体質に即した食材を把握していることも多い。また、温暖地域、夏場であっても冷たい飲み物は摂取しない、スカートは履かない等、中国女性は冷えに対して厳しく躾けられる。中医学では冷えが妊娠を阻害すると考えられているためだ。

中医学の国際化

生活に広く普及している中医学であるが、2009年5月、国務院は「国務院の中国伝統医薬事業の発展支援・促進に関する若干の意見」を発表し、中国伝統医薬と西洋医薬を並行して捉え、更に中医学の役割を発揮させる旨を 打ち出した。すでに中国国内ではナノテクノロジーとの融合など中医学は新しい局面を模索しつつある。

中医学の国際的な研究交流はこれまでも 盛んに行われてきた。昨今の代替医療に対する関心の高まりから、欧州や米国の大学・研究機関では、中国との共同研究がさらに進むといわれている。中医学の 世界は帰納法である。紀元前700年以上に遡る「黄帝内経」から長い歴史を経て複雑な処方が編み出されたが、常に人に効くことを前提に発展してきた。自覚 症状があればまず自覚症状を重視する、局所ではなく全身をとらえ本来あるべき正しい状態に戻すなど、長らく西洋医学の考え方とは相容れないとされてきた。

しかし、21世紀の現在行われているのは、西洋医学の技術発展を背景に中医学がエビデンスを獲得するというプロセスである。今後、中医学が中国発コンテンツ として世界にその地位を確立すれば、患者に与える影響は無視できない。世界中で体調不良に苦しむ女性にとって更なる選択肢が広がるといえよう。

(このコラムは、2009年6月1日に掲載した記事を再掲載したものです)

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